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養老孟司「森とは何か」

養老孟司のインタビューの文字起こし。

以下本編です。

 

森と人を育むプロジェクト「養老の森」顧問、「教えない森の学校」校長でもある養老孟司先生に街から森への「現代の参勤交代」をはじめ「森に行け」と提唱される理由を伺いました。

 

 

・都会は自然を排除する

 

ーーー随分前から「参勤交代」を提唱されて、「森に行け」と言い続けられてますが、その理由などのお話を聞かせて頂けますか?

 

いいですよ。

現代における普通の暮らしって言うと、大体が勤務、勤めってことになります。

それで勤めというのは場所が決まっていて、一番多いのは都会ですよね。都会でなければビルの中。

でも振り返ってみると、人の暮らしって元々それだけではないんですよね。

我々人間というものが生まれてせいぜい20万年って言われているんですけどね。

その間の殆どの時間自然との関わってきている。そして自然とは別の自然を排除した都会、僕の場合「都会は自然を排除する」とよく言うんだけれど、つまり自然を置かない場所。それを人は作り出して暮らすようになった。

その自然とのバランスが、どっか適当なところにあるはずなんだけれど、それが大分崩れてきてる。特に日本の場合ですね。

世界を見たときに、ヨーロッパなんかは都市社会として割合に古い社会ですから、今はそのバランスを大分気にするようになってきてますね。

例えば子供だと、自然欠乏症候群なんて言ったりね。育っていく間に自然に触れないといろんな問題が出てきちゃうとか言われてる。

ですから、今の日本の都市は、東京が特にそうなんだけれど、あまりにも人工的で、あれはよくないと思うんですね。だから、できるだけ田舎に行くのが良いんですよ。

 

・身体っていうのは考えてもダメ

田舎に行くって意味は、別に田舎が良いっていうじゃなく、結局人の中のバランスの問題なんです。都会の一番大きな特徴は、全部意識的にものを判断していくということ。あらゆるものを考えた上でやるわけ。

ところが、身体っていうのは考えてもダメなんですね。そもそも脳みそっていうのは、身体のことを考えるようにはできてないんですよ、元々。

脳みそで考えるのは外の世界をどうこうするっていう風なものですから、だから自分の身体の中に癌があったところで、考えてもわかんないんだよ。だから医者にいくしかないんで。

だからそういう自分の体のことって全然わかんないのかっていうと元々は、実はそんなことはない。

当然わかってるはずなんです。

 

 

・バランスの崩壊と医療費

バランスが崩れてくると何が起こるかっていうと、医者が不定愁訴っていうんものなんだけど、特定の病気なわけではない、これだと決まったわけじゃない症状があって、いろんな文句を言う、訴えをする、それが不定愁訴。(不定愁訴:明白な器質的疾患がみられないのに、さまざまな自覚症状を訴える状態。『広辞苑第六版』)

じゃあ自分がどういう状態だったらそういう文句言わないで、楽しく元気に動けるのかっていうことを多くの人が忘れちゃったんじゃないか。

そのために起こっている大きな問題の一つが莫大な医療費ですよ。

お年寄りの場合にはね、相手してくれる人があんまりいないんですよ。自分のことをみんな本気では相手してくれないから医者のところに行くっていうね。もうそれが普通になっちゃったでしょ

厚生労働省が「医療費がかかってしょうがねぇ」とか言って、それで禁煙だとか言ってるけど、僕が思うに一番の問題は、喫煙なんかじゃなくて、それぞれ一人ひとりが自分の体調がどうであれば普通なのかってことがわかんなくなっちゃった。

わかんなくなっちゃった大きな理由は、都会に住んでるからですね。

 

・そういう人がものすごく増えてるんじゃないかっていう気がする。

どうしてかっていうと、まず都会の気温はエアコンでしょ?一日中変わらないようにしてるんですよね。明るさもそうだし、歩く場所も全部たいらで同じ硬さで、っていうふうにして全部考えて統一してしまってるってことに案外みんな気がついていないんだよね。

それで一定の範囲の刺激しか受けてない。そうすると、それに合ってるひとはそれで良いんですけど、合わない人が出てくるのね。

それで時々刺激を与えて揺すってやんなきゃいけない。

いつも同じだと良いかっていうと、おそらく良くない。

 

僕はネズミを飼っていたからよく知ってるんだけど、

飼ってたネズミはね、何にもしませんよ。ぼーっとして。

だから仮に、カゴで飼ってるから外に出してやると、自主的に動くかって言うと、動かない。

もう、机の上に置いたら、そーっと机の縁を触って歩いてますよ、ゆっくり。

(人間でも)そういう人がものすごく増えてるんじゃないかっていう気がする。

 

そのネズミを放して一週間経ったら部屋の中走り回って、もうどこにいるかわかんない。

すぐ野生に戻るんですよ。

で、ネズミに聞いてみたら「今のほうが調子が良い」って言うと思うんだよね(笑)

 

つまり、人はそれが特に極端でね、頭で何でもしようとするから、

その傾向は良くないって僕は思うんですね。

良くないっていうのは、結局不健康の元ってことですね。

 

よくストレスって言うでしょ?

だからストレスもそうなんですよ。

だから、自分の基準が分かってないと、何がストレスで、何がストレスでないかわかんなくなっちゃう。

食べ物もそうだし。

 

5:41まで。

 

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